DXに向けて

DXに向けて チェンジ・マインド

 どのようなDXの実践においても、IoTで生み出される多種多様なデータを利用して、常に実態を認識し、ありのままの出来事(bare fact)をリアルタイムに把握することが、DXの価値を高める出発点になります。

 ビジネス環境が大きく変動する時代においては、たとえデジタルで価値を高める革新的なビジネスモデルや業務モデルが構築できたとしても、その変化変動する実態を即座に反映するデータを用意し自在に扱えることが必須です。特に、IoT領域においては可視化ができないと宝の持ち腐れになります。「とりあえずデータを溜めたから、後は分析をどうするかだけだ」ではDXは進みません。激変する環境下で、”可視化されたビッグデータ”は人や組織にとって必須のツールになります。

 人は意識・無意識に関わらずデータを五感で取り込み、人なりのビッグデータ処理をしています。人の能力を最大限に引き出すには、現場で起きる出来事(イベント)を分かりやすくすることです。そのためには、AIが出力する結果も合わせて人が理解しやすい形にデータを纏めることがポイントになってきます。

 既に、世の中には事実を共有するニュース配信という仕組みがあります。リアルタイムに配信されるネットニュースやSNSの世界です。世界中の変化変動を瞬時に伝達・共有できるようになり、ビジネスにも大きなインパクトをもたらしました。同様に企業の現場でデジタル化された事実は、ありのままの出来事として”共有”される必要があります。この”ありのまま”が共有されることで多様な解釈が生まれ、綿密なコミュニケーションが期待できるからです。

 ”ビッグデータは人の手に負えないからとりあえず機械で分析”は、運任せな面もあり不十分です。現場で生じる事実が分かりやすい形で共有できるようになると、次はそこから何を読取るかが重要になってきます。現場の出来事の要因や発生メカニズムを類推し仮説を立て、それから分析です。このデータの行間やデータの背景を想定し仮説を立てるのは、人の勘働きであり洞察力です。これを日頃から皆で磨いていくことが、AIを使いこなす上でとても重要になってきます。

 データから気づきを得てそこから仮説が創れても、まだ不十分です。気づき・解釈・仮説は各人多様であり、それらを議論することで相乗・触発効果を生み、より的確な判断や手戻りのないアクションや協働の一体感に繋がります。さらに、ここから新たなヒントやアイデアが生まれ、イノベーションへと繋がっていくことが期待されます。

 デジタルトランスフォーメーションは、なにをビジネスとして(WhatのDX)、それをどのようにやるか(HowのDX)を画期的に変革していくことです。 つまり、組織成立の3要件である「共通の目的」「協働の意識」「コミュニケーション」を抜本的に見直していくことです。ここで述べた事実を共有していく考えは、日本が培ってきた現場主義に通底します。この視点に立つとき、第4次産業革命は、ドイツ流の2軸の構図ではなく、組織軸を含む3軸で捉えていく必要があります。日本のものづくりが世界をリードし、そして貢献していく次世代の姿です。

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